桜とわんこ
今年もまた桜の季節が近づいているのがわかる。
だってほんのり春の匂いがしてくるから。
ぼくは毎年、家族とお花見に行く。
ずっと昔は近くの川沿いの桜並木まで頑張って歩いた。
人やわんこがたくさんいて賑やかで、
足音や自転車や車の音がいっぱい聞こえて、ぼくはちょっとびくびくした。
おかあさんが抱っこしてくれようとしたけど、ぼくは歩きたかったんだ。
だって、おいしいにおいがいっぱいしてきて、
みんな楽しそうに笑っていてぼくも楽しかったから。
今はもう川までは歩けない。
だから毎年、近くの幼稚園の桜を見に行く。
去年は幼稚園までの道のりも全部歩けなかった。
だけど、幼稚園の隣の空き地をちからいっぱい走った。
大好きなおかあさんのところまで走っていった。
今もたまに夢で見る。
今年はきっと空き地も走れないと思う。
だけど桜は咲いている。
だからぼくは楽しい。
いつか一緒に桜を見にいけなくなる日がくる。
家族はきっとさみしくなって泣いちゃうだろうな。
だけど桜は咲いている。
ぼくがちからいっぱい走った空き地がなくなっても
世界のどこかで桜は咲いている。
ぼくの楽しい思い出と共に春はやってくる。